• 「勝さん、私ね

    「勝さん、私ね、以前から思ってた事があるんです」「……………」「私は確かに未来が見える。そして、何度かそれを変えようとした事があります。…でも、結末は変わらなかった…だから私は見たものを受け入れる事にしたんです。未来は変えられない…変えてはいけないものなのだと。ならば何故、未来が見えるなんて力があるんでしょうか?」「……………」勝は答えない。いや、答えられない。すると紫音は寂しみ、勝の手を取った。流れてきた近い未来。散った桜が青々とした葉をつけている。その中で、泣く竜馬を勝が肩を抱いている。そこまで見て、子宮內膜異位症別亂補すぐに手を離した。「多分、刑が執行されるのは5月ですね…今なら間に合う」「………紫音」「私に出来る事をやりますよ。以蔵さんには私も多少はお世話になりましたから」行く先は土佐。長旅になる。それは京よりもずっと…。「船を準備する。お前さん、船は大丈夫かい?」「…船、ですか。初めてですね」「そうかい、じゃぁ船酔いには気をつけろよ。すまねぇが………頼む」それが勝の最大級の表現だった。笑顔で了承の意を表し、紫音は早速立ち上がった。 この時、もっと勝の未来を見ていたなら、先は変わっていたのかもしれない…。・ ・ ・ ・ ・ 「はっはぁ!やっぱり海の風は気持ちいいぜよ!!」「…そうですね」紫音と坂本は、薩摩行の船に便乗していた。京を過ぎ、神戸から乗った船は、幸い嵐にも見舞われず、順調に帆を進めていた。途中、勝の指示で土佐に寄る手筈になっていて、土佐まではあとわずかだ。坂本は船が好きなようで、毎日飛び跳ねて船員たちの邪魔をしている。そんな坂本を横目に、紫音はぐったりとしていた。「まさか紫音が船酔いするとはのぅ、意外じゃき!」「…黙ってて下さい。頭に響きます」今ばかりは坂本の大きな声は文字通り頭痛のタネでしかない。だが、なるべく普通に接するようにしていた。他人に弱みを見られる事は、紫音の中であってはならない事だったのだ。だが、目ざとく気付いた坂本は、こうして度々嬉しそうに看病に来る。今も、船室で寝ていた紫音を引っ張り出して、外の海風を浴びさせていた。「紫音!もうすぐじゃ!!」「………何回も聞きました。お願いですから………期待させないでください………う」紫音は波に揺られながら、魚の餌を撒き散らすのであった。魚…ごめんなさい……。 **********盛大に吐いてしまった紫音はぐったりとしていたが、船は坂本の言う通り、ほどなく土佐に到着した。さすがの紫音も、慣れぬ船酔いにすっかり体力をなくした。船を下りる時の船員の苦笑が恥ずかしく、また坂本に担がれたのも屈辱だったが、船酔いには勝てなかった。「紫音、辛かろうが急いでここを離れるぜよ」「………どこへ行くんですか?」「儂が生まれた家じゃ!乙女ちゅう姉がいるんじゃが、文ば出しちょるき、大丈夫じゃろ。すまんのぅ…儂は脱潘しとるき、堂々とおれんのじゃ」「構いません…行きましょう」よろよろと立ち上がる紫音に、坂本は手を差し延べた。伸ばされた手を拒むように、紫音は微笑む。青白く見える顔が、船酔いの辛さを表していて、坂本は困ったように頭をかいた。「強情な女子ぜよ。無理しちゃいかんき、辛くなったらすぐに言うんじゃぞ?」「ありがとうございます、行きましょう」本当は未だに海の上にいるような揺れる感じが続いていたが、大丈夫と言うように紫音は先を歩く。時間がないのだ。罪人と話す…警護にあたる数もわからない状態では出来はしない。

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